『Jリーグ 2ステージ制導入に対するモヤモヤ』

Jリーグが2015年シーズンより2ステージ制+ポストシーズン制を導入することを正式に決定した。
このニュースを聞いてから、何だかずっとモヤモヤしている。何故モヤモヤしているのか、自分なりに考察をしてみた。
批判めいた事も書くが、決して特定の誰かを責めるつもりもないし、貶めるつもりもない。
ただ、悲しい気持ちが強いので、それを残したいと思っただけです。そこを理解してもらって、以下を読んで欲しいです。


今回の件の問題点は以下の3点ではないかと思う。なので、それぞれについて考察していく。
(1)問題提起から決定までの経緯
(2)2シーズン制は、適正なチャンピオン決定システムか?
(3)後ろ向きな改革に未来はあるか?


(1)問題提起から決定までの経緯
今過去の記事を拾ってきたりすると、5月や7月にも2シーズン制のことが取り上げられていたりはするが、俺の受けた感じではこの9月に唐突に議題がでて、拙速に決定されたように思えた。サッカー雑誌を定期購読しているわけではないが、それなりにスポーツに関するニュースは気に掛けていたつもりだが、それらのニュースが耳に入ることは無かった。
2014年シーズンからの導入を断念という過去のニュースもあったので、熱心なサポーターからすると「遂に決定したか…」という感じかも知れないが、ツイッター等で見てみると、今回の決定の報道で知った人も多いみたいだ。
さて、リーグのレギュレーションを変更する際に、必ずしもサポーターの同意が必要だとは思わない。それぞれがそれぞれに意見や見識があり、その全てを納得させることなど有りはしないので。しかし、機構があり、クラブがあるだけではプロサッカーリーグが存在出来るわけではない。勿論観客というファクターが必要であり、実際に支えているのはサポーターの存在だ。しかし、2シーズン制導入の説明の殆どが、既存の観客の存在よりも、スポンサーや新規顧客の存在をより重要に捉えているような印象を受ける。自分たちがリーグを支え、成長させてきたという自負を持つ、熱心なサポーターにとってはこれは裏切られた感覚を得るだろう。
実際には、導入の経緯を知れば知るほど、リーグの窮状を鑑みて導入に一定の理解を示す人は多いだろう。だからこそ、形だけでも良いから、何かしらサポーターの気持ちを汲み取る仕掛けが事前に必要だったのでは無いかと思った。


(2)2シーズン制は、適正なチャンピオン決定システムか?
反対派の中には「1シーズン制が最も公平なチャンピオン決定システムである」という意見が多い。これには大いに賛同するが、1シーズン制にもデメリットは存在する。
欧州の主要なリーグは1シーズン制だが、これらのリーグを観る時に、必ずしも「解かりやすく、面白いシステム」だと言い切れない自分がいる。長いシーズンには重大な山場があるが、これは毎週毎週順位表を追って、今後の日程を見て星取勘定が出来る人にしか解からない(勿論各メディアがそれを補足してくれるが)。また、1チームがダントツに抜け出し、早々に優勝を決めると、後はただの長い消化試合になる。そもそも、欧州の主要リーグは、優勝争い出来るチームは2〜4チームくらいに限られていて、大体この中で毎年毎年優勝チームがたらい回しにされている。
※勿論、リーグの面白さは優勝争いだけでなく、チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)の出場権争いや、降格争いなども、存在しているが。


シーズン初めから、優勝の可能性が全く無いチームをどういうモチベーションで応援出来るのか?これはもはや文化だからだろうか。
実はJリーグは世界でも有数な幸せというか、面白い1シーズン制のリーグであり、J1としてそのシーズンのスタート地点に立てれば、優勝する可能性は全てのチームが持てるようなリーグなのだ(勿論全てのチームが降格する可能性もある)。前にある外国人監督の言葉に「Jリーグは全てのチームがシーズン前に優勝に言及できるサポーターにとっても幸せなリーグだ。私の国では2,3チーム以外が優勝を口にしたら笑われる」というのがあった。
シーズン最終節まで5チームが優勝の可能性があったシーズンがあれば、2部から上がってきたチームが優勝したりする群雄割拠リーグで、1シーズン制のデメリットを殆ど感じない結果が出ていたら、何故これを変えなければいけないのか?という気持ちにもなるだろう。


ここからは、私見ですが。今回の補填に近い理由でのレギュレーション変更が絶対的に必要であるならば、ポストシーズン制の導入は理解出来る。星取勘定が出来なくても、どこがそのシーズンの山場なのかが解かる。新規顧客にはとりあえず触れさせる機会になるといえばなる。その中から数%でもリピーターになれば、導入の意義があるだろう。
シーズンの価値が下がるという意見も正しいと思う。ただし、アメリカの4大スポーツは全てポストシーズンがあり、バスケのNBAに至っては、全30チーム中半数以上の16チームがポストシーズンに出場出来る。レギュラーシーズンはあくまでもポストシーズン出場を決めるものというコンセンサスが出来上がっていて、それぞれの優勝決定戦、NFLならスーバーボウル、NBAならファイナル、MLBならワールドシリーズ、NHLならスタンレーカップファイナルに勝ったチームがその年のチャンピオンであり、レギュラーシーズンにどんな好成績を挙げても、チャンピオンとは呼ばれない。
※勿論別リーグやカンファレンス制なので、総当たりではないから成立するのだが…。
日本でも、1リーグ制でポストシーズンがある競技も多い。ラグビートップリーグや、バレーのV.プレミアリーグもそうだ。
これは結局、その国やそのリーグの文化や思想によって築きあげられていくものだろうと思う。
ただし、前後期制はいただけないと思う。


(3)後ろ向きな改革に未来はあるか?
こう書くといろいろと怒られそうだ。正確に書くと「後ろ向きな改革(発表)に未来はあるか?」になる。これが最大のモヤモヤ。実際にはこのモヤモヤの前には、上の二つは小さい。

今までいろいろなスポーツのレギュレーションの変更を見てきた。そして、それらの発表は本音と建前の違いがあることは重々承知ながら、前向きな変更だと声高に叫んでいた。
これはレギュレーションというより、競技そのものが変わってしまった例だが、バレーボールはサイドアウト制からラリーポイント制に変わった。この変更は本音の部分は、試合時間がサイドアウト制だとどれだけ伸びるか解らず、テレビ中継する場合に放映時間が読めない、延長する可能性がある。という所だ。しかし、建前では「試合時間の短縮化」「得点の解り易さ」はたまた「攻撃権を持っている場合のミスでも失点するので、一つ一つのプレーが重要になる」といった変更による良い部分を前面に押し出してた。頭を捻る文言もあったが…。
レギュレーションの変更を行うのは、何かしら問題が存在するからだ。もし全てが順調に進んでいるのであれば変更をする必要はない。その変更による不利益よりも、利益を、本音より建前を、大義名分を通常はもっと言うはずだし、言わなければならない。もちろん改悪もある。しかし、例えばプロ野球の統一球だって「全てのチームの使用球を統一にすることにより、不平等さを無くす」「こすっても入るようなホームランを無くし、ホームラン自体の価値を高める」という大義名分があった。変更によって、「こんなに良いことがある」と通常は広報するものだ。


しかし、今回の変更に置いて、関係者が口々に「1シーズンがベストだということは解っているんだが…」と言う。こんな後ろ向きな改革(発表)は見たことも聞いたこともない。合っているかどうか解らないが、例え話にしてみよう。

ある開店20周年を迎えたある飲食店。ここのところ不況も手伝ってか年々客足が減っている。それでも昔から足繁く通ってくれる常連もまだまだ多い。ある時、近くの工場が移転することになり、ある程度見込めた固定客がごっそりいなくなることになった。このままでは「ヤバい」と思っている店主に、助け舟を出す会社が現れる。社内での弁当販売を許可してくれ、更に新規の客を紹介してくれると。ただし、その条件は今の目玉メニューの味を変えること…。
この条件を呑むことを発表すると、常連からは「味を変えないでくれ」嘆願される。それに対して店主は「味を変えないと、いずれ店すら無くなるんだ。だから理解して欲しい」「味は前の方が美味しいのは解っている。だけど、店を守る為にこの新しい味で我慢してくれ」「新規のお客がついて軌道に乗ったら元の味に戻すから」と説明するのだった。


これおかしく無いですか?この店主のやることは、泣き落としすることでは無く「新しい味」がどれだけ素晴らしいかを言い続けることだろう。常連は「昔の味が良い」と言ってる店主が出す料理をどう思うか?新規客は「今は出さないけど、昔出してた味の方が良い」と言っている店主の出す料理をどう思う?実際の味の問題ではない。気分の問題だ。常連はその料理を心から楽しめるのか?新規客はその料理を食べてみたいと思ってくれるのか?


どんなシステムだってメリットデメリットがある。実施前に批判に晒されるものもある。しかし、実際に行ってみたらそのまま定着して成功したものもある。メジャーリーグインターリーグ(日本でいう交流戦)が導入される時にも、批判は上がった。曰く「ワールドシリーズやオールスターの価値低下」「レギュラーシーズン成績の不平等の発生」などだ。この時も、本音はストライキで減った観客の増加が目的だったが、建前では「新鮮なカードの実現」という大義名分で押し切った。今では反対する声は殆ど無い。
プロ野球クライマックスシリーズ。これは未だに賛否両論でどちらというと否の方が大きい感じがするが、大義名分にあげた「消化試合の減少」「ペナントレース独走時の興味の持続」の効果は確かにある。俯瞰してみるといびつなシステムだが、贔屓のチームがある目線から見ると、優勝戦線から落ちても、目標の再設定はしやすい。
今年度から日本のラグビートップリーグは大幅なレギュレーションの変更を行った。従来の14チーム総当たりの1リーグ戦。上位4チームによるポストシーズン制から、2チーム増やし8チームずつの二つのプールに分け、まず8チームで総当たりを行う。その結果により、各プール上位4チームの8チームが上位プールへ、各プール下位4チームの8チームが下位プールへ行く。そして後半戦は各プールで総当たりを行い、上位プールの更に上位4チームがポストシーズンに進むという2プール2ステージ制だ。
このシステムだって問題はある。前半戦で上位プールに入る成績を残せなければシーズン途中で優勝する権利を失う。また、対戦しないカードも出てしまうなどだ。しかし、それらのデメリットを踏まえても、「前半戦の1試合1試合の重要性が増す」「後半戦は全て強豪チーム同士の対戦カードになる」という大義名分の方が正しく魅力的に思えるのだ。
トップリーグはまだ開幕したばかりで、これからどうなるか解らない。ただ、新しいシステムになってどうなるのか?という興味は尽かない。


Jリーグはこれからサポーターへの説明を行いたいという。しかし、切に願うのは、その説明が「補填に対する釈明」では無く、新しいシステムの魅力を前面に押し出したものであって欲しい。俺はポストシーズン制の導入には消極的賛成だが、前後期制には懐疑的だ。だが、それは今までの固定概念かも知れない。一度は行った制度を復活させるのだから、実はもっと違う前後期制の面白さメリットがあるのかも知れない。それを提示して欲しいのだ。「味は変わるけど、もっと美味しくなるんだよ。まだ食べたことが無いのなら、一度は食べてごらんよ」と声を大にして言って欲しい。
このまま行ったらリーグが潰れるよ。ってな話より、こんなふうに新しくなる、こんなに面白くなるって話の方が良いや。特に新規客はそういう話でなければ食いついて来ないだろう。
本音は違ったって、嘘でも、建前でもいいから「チャンピオンシップを、日本のスーパーボウルと呼ばれるようなイベントにする!」とくらい言って欲しかった。
本音の部分と建前の部分なんて案外みんな解ってたりするんだから。


「1シーズン制がベスト…」こんなセリフ、ただのアリバイ作りにしか聞こえない。変更を進め決定した人間が言ってはいけない。それが正しくて、本音だとしてもだ。
川淵三郎という人物は功罪あるとは思うが、メディア複合体である読売の要望を突っぱね「嫌なら出ていけ」と発言したことは、相手が渡辺恒雄ということも相まって、Jリーグの一つの神話になっている。「Jリーグは何より理念を優先する」という印象は強い。「1シーズン制がベスト…」という発言は、この神話を崩していくものだ。


そして、更に切に願うのが、もうこんなリーグの存続を人質にするようなことは、今回限りにしてもらいたい。こんなファンに対して恐喝めいた改革案発表をしたスポーツ組織を聞いたことが無い。


ファン・サポーターは当たり前だが、クラブを愛している、その先にあるリーグも同様だ。今回のように「リーグが無くなること」と「リーグ戦の形を変えること」を天秤に掛けさせられたら、答えは明白だ。ツイッターでも「無くなるよりは…」と今回のことを無理に納得しようとしている人も見かける。
今回の減収や今後の観客減少の見通しがどうなのか、細かいところまでは俺には解らない。本当の危機なのかも知れない。実はまだ余力はあるのかも知れない。ただ、「存続」を天秤に掛けて、今回多くの人を納得させたとしても、それを成功例だとして欲しくない。次に同じようなことがあった時、今回踏みとどまった人も次は離れるかも知れない。「存続」を掛けるという「伝家の宝刀」をもう抜いてしまったことと、それは一度しか使えないものだと思ってもらいたい。


(4)最後に
だらだらと長くなってしまったが、そんなの読めねぇよっ!って人の為に、要約すると、
・決定までの経緯に問題なかったか?
・1シーズン制が絶対的正解とは限らないのでは?
・「補填に対する釈明」では無く、「どう良くなるのか」を語って欲しい。
ってことですね。


いろいろと暴言も書いたが、関係者はそれぞれの立場で奔走して頑張っていると思う。そういう人たちを糾弾したいわけでは無く、
こういう考え方もあるのでは…という気持ちで書いた。1993年のJリーグ開幕。実際にはJSL時代からサッカー好きの戯言です。


最後に自分が考えるポストシーズンの改革案としては、J1を22チームにして前年度の成績を元に11チームの2つのプールに分ける。
同一プール内ではホーム&アウェイの20試合。別プールの11チームと1試合のシーズン31試合。各プール上位3チームがプレーオフに出場。各プールの2位と3位をクロストーナメントして、勝ち上がった方が各プールの1位と対戦。更に勝ち上がった2チームがチャンピオシップを戦う。
まあ、同一プールの1位と2位or3位がチャンピオンシップで戦う可能性があるとか問題はあるけどね。東西地区制を上げる人もいるけどチーム固定よりシャッフルの方が良いかなと。まあ実現しないだろうけど…。


まあ、本当にポストシーズン制は良いんだけど、前後期制だけは止めてくれないかな…。