「カート・ワーナーが引退」

http://www.nfljapan.com/headlines/12190.html
あああ、『20世紀最後のフェアリーテイル(おとぎ話)』と呼ばれたカート・ワーナーも遂に引退か・・・。


NFLに入るということは、アメリカのアスリートでもエリートのみが許される狭き門だ。ましてやQBともなると、身体能力だけではなく、強烈なリーダーシップと、プレーブックを全て理解する頭脳を持ち合わせてなければならない。


ワーナーは無名の3流大学を卒業した無名の選手だった。勿論ドラフトされることなどない。普通はここで諦めるもんだ。1流大卒の有名選手でもドラフトされないことだってあるのだ。
だけれども、ワーナーは諦めなかった。マイナースポーツだった屋内アメフト、アリーナ・フットボールでプレーし、シーズンオフは、時給5ドルのスーパーマーケットのレジ打ちのバイトをしながら、家族を支えて夢を追った*1
アリーナ・フットボールからNFLヨーロッパで実績を積み、1998年にセントルイス・ラムズ入りしたが、4番手QB。一シーズン一人のQBでまかなう事が多いアメフトでは、4番手など試合にすら殆ど出ることもない存在だ。デプスチャートにすら載らない。大概が一年で首を切られる。1999年の開幕前に何とか2番手に昇格したが、それでも2番手。しかし、ここで転機が訪れる。


エースQBトレント・グリーンが開幕前のプレシーズンゲームで負傷。ワーナーに開幕QBの座が回ってくる。
この年のラムズは良く覚えている。マーシャル・フォークの1000Ydsラン+1000Ydsレシーブも凄かったが、アイザック・ブルースとトニー・ホルトの所謂“ワーナー・ブラザーズ”。スクランブル能力の無いワーナーはとにかく投げまくり、リーグ最多の41TDパス。
「芝の上の最高のショー」とまで言われた。


ここまでだったら、まだ有り得る話。しかし、この後プレーオフも勝ち上がり、遂にスーパーボウルに出場。レギュラーシーズンに続いてスーパーボウルでもMVPに輝き、ラムズを初のスーパーボウルチャンピオンに導く。


「数年前までスーパーのレジ打ちをやっていた男が、スーパーボウルのMVPを獲る」。こんな話、ハリウッドの脚本家だって書いたらプロデューサーに笑われるだろう「有り得ない」って。と、当時のアメリカのコメンテーターがコメントしていたのを思い出す。


低迷していた時期もあったが、2008シーズンでは、1920年創設以来一度もスーパーボウルに出れなかったアリゾナ・カージナルススーパーボウルに出場させ、残り35秒で逆転されたが、健在ぶりを発揮していた。今年2009シーズンもディビジョナル・プレーオフまで導いたが、敗退した。


マット・ライナートへの禅譲ということなのは理解出来る。特にライナートは左利きなので、ラインからチーム作りを変えなければならないしね。ただ、今年も一試合のパス成功率記録を作るなど、一線級な成績を残しているだけに惜しい気もするけど・・・。


ワーナーを見る度、諦めない事の大切さを教えられる気がしていた。お疲れ様でした。

*1:家族に支えられてとも言えるが。ちなみに奥さん超美人。奥さんも偉いよね