「プロ野球はどうなっていくのか」


鈴木明*1の「プロ野球を変えた男たち」を仕事で円谷プロから帰る途中、祖師谷大蔵の商店街の古本屋で見つけた。プロ野球セ・リーグパ・リーグの分裂の経緯を、若林忠志*2の生涯と、昭和25年の第一回日本シリーズの第一戦*3をリンクさせて書かれている珠玉のノンフィクションだ。
鈴木明のプロ野球に関するノンフィクションは、以前に「昭和二十年十一月二十三日のプレイボール」*4を読んことがあった。この本も素晴らしいノンフィクションだったので、この「プロ野球を変えた男たち」是非読んでみたいと思っていたのだが、ネットでも扱っておらず、諦めていた。
イムリーなネタでもあり、また今後日本のプロ野球がどうなっていくのか、その結果が出る前に、一プロ野球ファンの自分の見解と、希望を書き残しておくべきだという思いに駆られ、今回のコラムを書く事にした。
正直、今回のオリックス近鉄の合併話が起き、ライブドア堀江社長が買収に名乗りを上げた一連の騒動は急に起こったような印象を与えているが、実際はやっと出てきたかという思いが私にはある。
なぜなら、かつての近鉄オーナー佐伯勇が1989年に亡くなってから、近鉄は球団を持っている意義が存在しているのかという気持ちがあったからだ。
まあ、近鉄*5は、赤字の球団をもっても、広告宣伝費で賄えるだけの本社規模をほこっていると思っていたが、本社もそんなにヤバイことになってるとは思わなかったのだが。

1988年に南海と阪急がそれぞれ、ダイエーオリックスに身売りしたとき、電鉄系が球団を持つ時代が終わりを告げたのだなと感じていた*6。その時に近鉄が身売りをしなかったのは、プロ野球チーム経営に情熱を持っていた佐伯オーナーが健在だったことと、関西最大手の資金力があってこそだと思った。阪急は資金的にそんなに苦しかった*7わけではなかったが、同じように球団経営に情熱を持っていた小林一三オーナーはもうすでに他界していた。南海が身売りする情報を聞きつけて、阪急だけが身売りをすれば評判を落とすかもしれないが、他のチームと同時ならその矛先を一手に引き受けなくても良いという算段も働いたのだろう。
その時代その時代に隆盛を極めた業種が、道楽とまで言われてしまうプロ野球チームを持つのは至極当然のような気がする。かつては、プロ野球チームを持っていたのは電鉄系だった*8。そして、同時代またはその後球団経営に大きく関わったのは映画会社だった*9
だから、IT業界がプロ野球の経営に関わってもおかしくはないし、現にJリーグのヴィッセル神戸はIT企業の楽天がオーナーになっているのだから。
ただ、多分ライブドアが買収することはないだろう。それは、結局は同じような事を55年前にもやっているし、ずーっとそうやって来たからだ。

前置きが長くなったが、ここからが私の言いたい事だ。

私は一リーグ制に絶対反対の立場ではない。ただチーム数の削減には絶対反対だ。今この頃は、「パ・リーグの伝統が…」等々の言葉を聞くと、そのパ・リーグがどのような経緯で出来上がったのかを知って言ってるのか、という疑問にぶち当たる。パ・リーグつまりセ・パ分裂は偶然の産物でしかなかった。毎日新聞を筆頭に数ある企業がプロ野球経営に興味を持ち、既得権を守ろうとした既存のチームの反発を招き、リーグへの参加がすんなり行かなかった*10ために、ブラフをかけた事が発端だったはずだ。根回しをして、既存8チームの意見を5対3にして押し切ろうとした時に、阪神が裏切って4対4になってしまったために分裂してしまったためではないか。そこには、2大リーグ制移行という思惑が偶然絡み合って成立してしまっただけではないか。
当初、その経緯からセ・パの間に強烈なライバル心が芽生えて、上記の第一回日本シリーズの第一戦に43歳の若林が登板するというドラマを生み出したり、西鉄と巨人の壮絶な日本シリーズの戦いが生み出されていったのは否定はしない。しかし、そのパ・リーグの反骨心で成り立っていたものが崩れ落ちてきているのも確かなのだ。だとしたらパ・リーグ、そして日本シリーズの役目はもう終わったのではないだろうか。
悲しいかな、今のままではいけないのも事実だ。だから、正直この騒動をプラスに活かして欲しいのだ。多分思いうる最悪の事態*11になったとしても私は日本プロ野球に見切りをつけて、ファンで無くなることはないだろう。だからこそ、だからこそせめて痛みを伴っても大きな改革をこの機会にして欲しいのだ。正直言って、近鉄をどこかの企業が買い取って、現行のままになるのも、ある意味では最悪なシナリオの一つだ。ただ、問題の先送りになるだけだから。
あの巨大新聞社のオーナーがなぜあそこまで一リーグに拘るのか、どんなメリットを感じているかは今現在の報道では出てこない。しかし、それが規定路線になっているのは事実だ。多分それが覆されることは無いだろうとも感じる。だとしたら、その枠組みの中で考えうる最高の状態になって欲しいと切に思うのみだ。
最後に、私が思う改革案を書いておこう。そして、来年の今頃、何が改革されたのかを比べてみよう。この中の一つでも叶っていれば、まだ日本プロ野球に未来はあるのかも知れない。

  1. どこかの企業*12が、近鉄を買収。現行12チームの2リーグ制。しかしながら、交流試合の導入。
  2. サラリーキャップの導入。課徴金制度あり。
  3. テレビ放映権のコミッショナー一括管理。ローカル局への販売権は各チームが保有*13
  4. 2チーム削減の一リーグ制。5球団ずつを東西に分けて、プレーオフの開催
  5. 一企業一チームの見直し。複数企業による経営参加。企業名の撤廃。
  6. 完全ドラフト制へ戻す。その場合、FA期間の短縮。

ありきたりかも知れないが、現状の中で出来そうなことをあげた。
本当の理想は次の通り。

3チーム増やして15球団の3地区制。もちろん交流試合はあり。3地区の優勝チームとワイルドカードを合わせた4チームによるプレーオフ
プレーオフの充実が一番だと思う。球団削減するとそれから一番遠ざかるのだが…

*1:ネット検索したら去年亡くなっていました。ご冥福をお祈りいたします

*2:ハワイ生まれのかつての阪神の大エース

*3:43歳の若林が延長戦完投勝利し、毎日オリオンズ勝利する

*4:終戦の年、プロ野球の復活となる東西対抗を開催するまでの話

*5:関東に暮らす私には実感できないが、関西の電鉄の最大手らしい

*6:阪神に関しては、親会社より稼ぐ子会社ということで例外

*7:クループ全体の構造の中では

*8:東急フライヤーズ南海ホークス、阪急ブレーブス近鉄バファローズ、西鉄ライオンズ国鉄スワローズ阪神タイガース

*9:松竹ロビンズ、大映スターズ東映フライヤーズ大毎オリオンズ

*10:ここに問題点があるのだが

*11:2チーム削減→一リーグ。そしてその他の改革は何も無し

*12:あの人も「知ってる」って言わせられるような良いところ

*13:実現が一番難しい事だってわかってる。でもこれは最大の改革。コミッショナー権限の拡大に繋がる