「さんかく」

7月2日鑑賞。仕事先から直帰になったので、最終回に間に合いそうだったので劇場へ。
吉田恵輔監督作品。前作『純喫茶磯辺』が伏兵的な良作だったので、まあその貯金もあるし気軽に観に行った。
予告で流れる羊毛とおはなの主題歌が醸し出すように、ハートフルなラブコメかと思いきや、なかなかに抉ってな。


高岡蒼甫田畑智子の同棲2年目で倦怠期*1の二人の元に、夏休みだけ泊まりに田畑智子の妹、中学3年生の小野恵令奈がやってくるところから始まる。
いやー、出だしはほんわかとした雰囲気なんだけど、中盤からはホラーと言っても過言じゃない。驚かすっていうのじゃなくて、身を捩るような痛みってヤツですよ。しかし、この


高岡蒼甫の浅はかさを笑える男子はいるのだろうか?
田畑智子の愚かさを笑える女子はいるのだろうか?


って気になるよ。笑えるけど、そりゃ乾いた笑いだわな。
小野恵令奈ってAKB48の娘なんだな。知らんかった。いや、演技とかヘタクソも良いところで、セリフ回しもぎこちないんだけど、鼻にかかったような声でのそのそのぎこちなさが、また・・・(以下、自主規制
まあ、10代の女の子の無敵感っていうか、屈託の無い残酷さっていうのか、ともかくあの年代にしか出せない何かをキチンと出してたよ。15とかって犯罪だろって思いながら、惹かれてってしまう高岡蒼甫を笑えなかったりするんだな、これが。説得力はちゃんとあったな。


田畑智子は、別にこの女優さんのフィルモグラフィを追ってるわけじゃないけど、多分その中でも最高の演技だったと思う。安心から来る女性の鷹揚感*2から始まって、あらゆる負の感情と行動を出し尽くし、そしてあのラスト・・・。


という訳で、以下はネタバレありで


ラストシークエンス、姉妹ケンカした後の翌日のゴミだしから、高岡蒼甫田畑智子小野恵令奈の三人の視線の絡み。セリフ無しで行くところが、映像作品の醍醐味だよね。そして、ラストの田畑智子の笑顔。あれで、田畑智子を抱きしめたくならない男子がいるなら、俺のところへ来い!って気になる。


一つ解らなかったのが、桃(小野恵令奈)が何で高岡蒼甫を誘惑するのか?ってところだったんだけど・・・(だって、あれは反則でしょ。ああされて、揺らがない男っているのか?)、人の感想ブログを読んで納得。痴漢されるってのが引き金なんだね。あれで、今まで先輩からもあまり女として見てもらえてなかった桃が、(女として意識していなかった)自分が男子とって、そういう対象に成り得るって事を知って、まあ身近にいた百瀬(高岡蒼甫)で試してみたって読み取りで良いんだよな。
それって、百瀬にとっては凄い残酷だけど、まあ女子ってそういうところあるからな〜。


実際、外の包装が刺激的で良さげだけど、中身が空っぽの『告白』なんかより、包装は甘ったるそうだけど、中身にはキチンと普遍的なテーマでのドラマがあって、良作だったよ。
こうなると『机のなかみ』が観てみたいな。

*1:とあらすじには書かれているが、そうは思わなかったな

*2:これについては「アイアンマン2」の感想でも述べます。