「笑う警官」

かなり前から、池袋のジュンク堂にポスターが貼ってあって、評判は芳しくなかったのだが、気になって鑑賞。
角川春樹の勝負作らしい。これがコケたら…って感じらしいね。


技術的なことで一言。なんか時々ピンがずれてた気がした。演出的効果じゃないな。後、役者越しに相対する役者を撮る時に、肩が相手の顔に被るシーンがあって、それが非常に気になった。3人シーンで、会話するのはもう一人なので、そこまで致命的じゃあないんだけど、感情が振れてるシーンなので、顔を映さない意味が無いし、デメリットが大きいと思うんだが…。


腐敗した組織と、その組織に属している人間の内面的な相克がテーマなんだってのは判るんだけど、それをやるには、登場人物達の初期スタンスをはっきりさせなきゃダメでしょ。それに相反する行動を起こす、起こさざるを得ないから物語が転がるんだろうと。
後、実際観客って「腐敗慣れ」してるよね。だから、登場人物の怒りと観客を同化させるのには、もっと工夫が必要だよね。身につまされないと同化は出来ん。別に「北海道警」の上が腐ってても、俺の生活には何の問題もないもん。
だから、みんな大なり小なり「組織」に属してるだろうから、「組織との対峙」を軸にしなきゃ、観客は乗れないと思うわ。
主役の大森南朋を「揺らす」なら、松雪泰子の役が「神の目線」にならなきゃいけないし、若手新人刑事の忍成修吾がブレない支点を提示し続けなきゃいけないと思うんだけど、やってるけど、どっちも中途半端なんだよね。
誰かが「草」かも知れない!?という仲間内での疑惑も必要だと思うんだけど、結構淡々と進むし、協力者が現れたりもする。こういうのは、チームが孤立無援になって行かなきゃだよね。


「15時間」のタイムリミットだけど、夜の7時から翌朝の10時までの「15時間」なんだよね。その間に捜査って、夜2時とか過ぎたら、実際には捜査なんて出来ないから、すげーロスがある時間設定。
実際、無駄な時間多し。


全体的に言うと、登場人物喋りすぎ。説明し過ぎ。映画って行動を見せるもんでしょ。会話のみの進行ってダメでしょ。結構会話で行っちゃう。画的な面白さが、ほぼ一切無いって映画としては致命的だよね。小説なら持つだろうけど。


後、音楽って大事だよね。使われる音楽がほぼ全編メロゥなジャズナンバーなんすよ。ああ、「ハードボイルド系映画」を目指してたのね。タイトルバックがタイプライターで打ち出されるあたりからその臭いが…。同時にダメ映画っぽい臭いもしたけどね。とにかく、クライマックス(と言えるのかな)もそれじゃあ別の意味で泣きそうだ。


前田有一のところにも書いてあったけど、大森南朋松雪泰子の恋愛描写もいきなりだな。っていうか全然必要無いし。ラストシーンも意味不明。ってか、中川家の礼二はそこにはいれないだろ。


まあ、角川春樹には敬意は持ってるよ。角川映画で育った世代だしね。しかし、なぜこれが勝負作なんだろう?そして勝負に負けたことだけは如実に判ったよ。お疲れ様でした。