「ディア・ドクター」

この前仕事で行った目黒で、ふと目にした映画館で公開しているのを知ったので、銀座から目黒に移動。「ゆれる」との二本立てなのだが、最終回の1本だけを観るなら半額。そりぁ行くでしょ。
「目黒シネマ」いや、かなり気にいったよこの映画館。名画座系って今まであまり馴染みが無かったが、ここは邦画を押してるのか、2月まではオール邦画。
確かに上映環境はシネコンやら、新しい映画館とは比べ物にならないけど、劇場内の空気は、映画が好きな人間臭が漂ってて心地良い。前戯として映画観るような連中と同じ空気を吸わなくて済むからね。
1月は堺雅人関係。2月6日から「空気人形」と「色即ぜねれいしょん」の二本立て。これは絶対に観に行く。両方とも公開時に行けなかったけど観たかったヤツなので。
いやー、生き残って欲しいよ「目黒シネマ」。マジで一目惚れだよ。一回しか行ってないのに、閉館したら泣くな、マジで。
何て話を姉貴にしたら、姉貴とスゲー縁の有る映画館だって話を聞いた。「まだ、あったんだ・・・」って言ってたけど (^^;;


さて、本編だが、いやスゴいな西川美和。同じ年か〜。そういう事実に打ちのめされるな。役者が、適材適所に配置され、それが全員機能的に動いている。ストーリー構成も演出も見事だと思う。いやー、アブねえ、このままスルーしてたら後悔するところだった。
鶴瓶以外に考えられないよ、主役。全員が全員、自分の持ち場で最高の演技をしたと思う。俺はあまり、演出だとか演技だとかというところに関しての造詣は低いのだが、俳優という生き物の力に圧倒されたよ。
さて、人間としての男としての見識と素養を疑われそうな事を覚悟して書く。しかし、それこそがこの映画を形成する肝だと信じる。


とにかく、この映画の八千草薫はエロい。


実年齢78歳。映画内でも66歳という設定の、人生の大先輩の女性にそう言うのは本当に憚れるのだが…。
映画内では勿論明示されないが、鶴瓶八千草薫はデキてる。肉体関係は無いかも知れないけれど、男と女の関係なんだと、そこに愛情を感じさせられる。人間愛では無い。八千草薫は所作のわずかな部分でエロさを発揮する。だからこそ、その関係性に説得力があるのだ。だからこそ、鶴瓶は苦悩するのだ。
主要登場人物たちは皆『嘘』をつく。誰の為に?『人の為に』だ。それが、哀しいけれどいとおしく感じさせる。


一番印象に残ってるシーンは、鶴瓶余貴美子のお尻を叩くシーン。たった一つの動作に、様々な感情を入れ込ませる。ああいうのは、自分が書けるのかというのを投げかけられるね。鳥肌が立ったよ。


様々なことを考えさせられる。「愛情とは何か?」「優しさとは何か?」「仕事とは何か?」「尊厳とは何か?」「医療とは何か?」「嘘とは何か?」
うーん、良いもんを観た。